特集
トム・スコット=フィリップスの肖像(ペン画イラスト)

トム・スコット=フィリップス

言語が生まれる前に、まず「伝えていると示す」コミュニケーションがあった。メアリーと野イチゴのたとえから、意図明示・推論、関連性、読心、そして類人猿との比較まで。『なぜヒトだけが言葉を話せるのか』を十本で読む。

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『なぜヒトだけが言葉を話せるのか』を読む——言語の前に「意図を示す」があった

動物の鳴き声は「コード」で伝わる。ヒトのことばは、それだけでは説明できない。トム・スコット=フィリップスは、言語が生まれる前提に「意図明示・推論コミュニケーション」があったと論じる。この特集は、その骨組みを五本で読む。

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メアリーと野イチゴ——「伝えている」と示すとは、どういうことか

野イチゴを食べて見せるだけで、「これは食べられるよ」は伝わる。ただし、わざとらしく食べて見せると、もっとはっきり伝わる。この差が、意図明示コミュニケーションの入口である。

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コードから意図明示へ——組み合わせ的な信号は、なぜ自然界で稀なのか

新しい信号が生まれる道は三つある。儀式化、感覚操作、直接経路。言語の特徴である「組み合わせ」は、なぜ最初の二つの道では生まれにくいのか。ニワトリと卵の問題から、第2章を読む。

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関連性と読心——意図明示コミュニケーションを支える心のしくみ

「ビルはどこ?」「スーの家の前に黄色いフォルクスワーゲンがあるよ」。字義どおりには答えていないのに、なぜ通じるのか。グライスの格率から関連性理論、そして「彼が知っていることを私が知っていることを……」という再帰的読心まで、第3章を読む。

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類人猿は意図明示的にコミュニケーションするか——比較研究と社会脳

チンパンジーの身振りは、意図的だ。けれど、意図明示的とはいえない、と著者は論じる。ヒトに特有の理由を、社会脳仮説に探り、最後に、言語がその上でどう進化するかの入口(第5章冒頭)まで見る。

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言語はどう組み立てられるか——文化的牽引と、劣化する言語の実験

言語は、生物のように「複製」されるのではない。伝わるたびに「作り直される」。その作り直しが、色彩語・声調・語の構造を、どんな形へ引き寄せるのか。伝言ゲーム式の人工言語実験を中心に、第5章後半を読む。

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言語は「適応」の産物か——ピンカー=ブルームと普遍文法をめぐって

運動誘発盲という錯覚を、欠陥と見るか、適応と見るか。適応主義の方法を確かめたうえで、「言語能力は自然選択で進化した」というピンカーとブルームの主張、普遍文法との関係、そして言語のほんとうの機能は何かを、第6章前半で読む。

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言葉はなぜ嘘だらけにならないのか——警戒・評判・ハンディキャップ、そして結論

嘘をつく方が得なら、言葉は信じられなくなり、やがて崩れるはずだ。それでも、ヒトは話し続ける。認識的警戒、論証、ハンディキャップ原理と、著者が最後に挙げる「社会的評判」を経て、本書の結論までを読む。

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「いじる」はなぜ通じるのか——コードモデルと意図明示・推論モデル

葬式で「あいつを取り出していじってあげるよ」と言ったら? 発言の字義と、話し手が伝えたいことは、ずれる。このずれを、二つのモデルがどう説明するかで、言語の起源の見え方が変わる。序と第1章の前半(1-1〜1-4)を読む。

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言語は「弱いコード」である——自然コード、慣習コード、意味の二つの意味

「夕食、一緒にどうですか」「さっき食べました」。この会話は、コードとして見ると、何も伝えていない。それでも、通じる。言語コードはなぜ非力で、それでも強力なのか。自然コードと慣習コード、グライスの「意味」、究極的説明と至近的説明を読む。

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