この特集では、概要から始まり、「言語は有機体」という発想、「語尾は化石になった代名詞」という理論、序文の精読、そしてグリムとの接点までを見てきた。最後に、この大著を、二百年近くのちの言語学の視点から採点しよう。

確かに残ったもの

文法の語尾は、もとは独立した単語(代名詞など)だったものが、繰り返し使われるうちに擦り減って固定化したものだという発見は、今も言語学の中心にある。現代の言語学では、この現象は「文法化」(grammaticalization)と呼ばれ、独立した単語が、より抽象的な文法要素へと変化していく過程として、世界中の言語で確認され続けている。別の記事で読んだ、サンスクリット語の -mi が代名詞 ma に由来するという具体的な分析も、大筋において今日でも支持されている。文法体系全体を複数の言語にわたって比較するという方法論そのものも、比較言語学の標準的な手続きであり続けている。

行き過ぎてしまったもの

だが「言語は有機体である」という比喩は、前の記事で見たとおり、のちの世代の手で、文字どおりの生物進化論へと推し進められた。現代の言語学は、言語の変化を説明するのに、もはや生物学的な比喩を必要としない——話者どうしの相互作用や、認知の仕組みから、変化を説明する枠組みが主流になっている。「言語は生き物のように育ち、老いる」という語り口そのものは、今日ではむしろ、控えめに扱うべき比喩だと考えられている。

確かに残ったもの 語尾は化石になった単語(=文法化)/文法体系全体を比較する方法 行き過ぎてしまったもの 「言語は有機体」を文字どおりの生物進化論へ拡張(シュライヒャーら) 強力な比喩ほど、どこまでを字義どおり受け取るかの線引きが要る
ボップの功績、二百年後の採点。図:ToL

六つの特集をつないで

この歴史特集は、ジョーンズの一段落、ラスクの懸賞論文、グリムの一枚の表、ボップの文法体系全体の比較、ミュラーの講演、そしてイェスペルセンの総合書と、六人の仕事をたどってきた。ボップの物語は、この特集群を貫く教訓に、もう一つの角度を加えている。強力な発見や比喩は、それを生んだ本人の手を離れたとたん、思いがけない方向に育ちうる。「言語は有機体」という比喩は、ボップの手の中では、語尾の化石化という繊細な分析を支える道具だった。だが同じ比喩が、次の世代の手に渡ると、言語や民族を「健康」「退化」で序列化する、もっと危うい語り口の土台になってしまった。

まとめ

評価対象
確かに残った語尾は化石になった単語という発見(文法化)、文法体系全体を比較する方法
行き過ぎた「言語は有機体」を文字どおりの生物進化論として扱う拡張
期待される限界ボップ自身の文章にも見える、言語の型を優劣で語る19世紀の偏り

一言でいえば——ボップが磨き上げた分析の道具は、今も言語学の現場で使われている。だが彼が選んだ比喩は、のちの世代の手で、道具にも武器にもなりうることを示した。発見そのものの価値と、それを語るための比喩の扱いやすさは、別々に見極める必要がある——この特集で読んできたすべての人物に共通する教訓が、ここでも繰り返されている。