オットー・イェスペルセン
ジョーンズ・グリム・ミュラーが積み上げてきたものを受け取り、一冊にまとめ上げたデンマークの英語学者。『言語——その本質・発展・起源』(1922) を、「言語は進歩する」という主張から、子どもの言語獲得、ピジン語論、言語起源論、そして今なら通らない「女性」の章まで読む。
オットー・イェスペルセン『言語——その本質・発展・起源』(1922) を読む——比較言語学の百年を、一冊にまとめた男
デンマークの英語学者が、還暦を過ぎて書き上げた一冊の総合書。言語学の歴史、子どもの言語獲得、ピジン語、そして言語の起源まで——19世紀の比較言語学が積み上げてきた成果を、一人の手でまとめ上げた仕事を読む。
英語は退化していない、進歩している——イェスペルセンの挑発を、やさしく
古英語にあった格変化や性の区別を、現代英語はほとんど失った。これは「堕落」なのか? イェスペルセンは、川底で磨かれた石を例に、まったく逆の見方を示してみせる。
子どもの言い間違いは、間違いではない——イェスペルセンの子ども観察を、やさしく
geese を gooses と言い、littler を「もっとも小さい」の意味で使う——子どもの文法の「間違い」は、実はでたらめではない。そこには、大人と同じ規則を、大人よりも忠実に適用する姿が見えてくる。
ピジン語は、崩れた英語ではない——イェスペルセンのピジン語論を読む
白人が現地の人に向けた「赤ちゃん言葉」こそが、ピジン英語の乱れの原因の半分を占める——1922年の時点で、イェスペルセンはそう書いていた。植民地時代の思い込みに、あえて逆らった一章を読む。
ワンワン説、痛い説、チンドン説——言語起源論を、イェスペルセンが一刀両断する
犬の鳴き真似から言葉が生まれたという説、感嘆詞から生まれたという説、そして——ミュラー自身が唱え、のちに賢明にも撤回した説。歴代の言語起源論をイェスペルセンが手際よく裁いたあと、彼自身が示す意外な答えを読む。
「女性」の章を読む——イェスペルセンが真顔で書いた、今なら通らない主張
「天才も、言語的無能も、女性にはめったに見られない」——1922年、コペンハーゲン大学教授は、これを学問的な結論として書いた。根拠にされた「男性のほうが変異が大きい」という当時の疑似科学と、そこから抜け出すのに社会言語学が要した歳月を読む。
検証——イェスペルセンの『言語』は、百年後の言語学からどう見えるか
子どもの言語獲得への先駆的な観察は、今も色あせない。だが「女性」の章は、明確に修正された。一冊の本のなかに同居していた先見性と偏見を、百年後の視点から採点する。