アウグスト・シュライヒャー
ボップが比喩で語った「言語は有機体だ」を、植物学者でもあったシュライヒャーは字義どおりに引き受けた。15年の講義録から生まれた『比較文法要覧』(Compendium) を、「言語は生きるが歴史は持たない」という断言から、今も使われる星印(*)の発明、そしてダーウィンとイェスペルセンへの意外なつながりまで読む。
アウグスト・シュライヒャー『比較文法要覧』(1861) を読む——植物学者が言語学に持ち込んだ、もう一つの自然科学
ボップが「言語は有機体だ」と比喩で語ったところを、シュライヒャーは字義どおりに引き受けた。15年の講義録から生まれた、学生向けの一冊。ここから、比喩は科学的主張へと変わっていく。
言語は「生きている」、しかし「歴史」は持たない——シュライヒャーの不思議な断言
植物や動物のように、言語も「生きて」いる。だからこそ、人間のような「歴史」は持たない——シュライヒャーはそう言い切った。矛盾に聞こえるこの主張を、かみくだいて読む。
進歩ではなく、衰退——シュライヒャーの言語史観
言語は最初に完成形へと発展し、そのあとはひたすら崩れていく——シュライヒャーはそう考えた。この史観は、半世紀以上あとにイェスペルセンが真っ向から否定することになる。
精読——「言語は生きる、しかし歴史は持たない」の原文と、三段階の言語分類
『比較文法要覧』序論の脚注に記された、たった一文。そして、中国語・フィン語・セム語族を並べて言語を三段階に分類する、シュライヒャー独自の記号体系。原文のドイツ語で読む。
精読——星印(*)の発明、あるいは「再建された祖語」をどう書き記すか
現代の比較言語学者が今も日常的に使う記号——星印(*)。それを最初に体系立てて使ったのは、他ならぬシュライヒャーだった。たった二行の脚注から、この記号の起源を読む。
系譜——ボップから受け継ぎ、ダーウィンと交わり、イェスペルセンに否定される
「言語は有機体」という比喩を、ボップから受け継いで字義どおりに育てたシュライヒャー。1863年、彼はダーウィンの進化論を自ら言語学に接続する公開書簡を書く。そして半世紀後、イェスペルセンが彼の史観を正面から覆す。
判定——シュライヒャーの『比較文法要覧』は、二百年近くのちの視点からどう見えるか
星印(*)の記法は今も生きている。三段階の言語分類も、なお参照される。だが「言語は生きるが歴史を持たない」という断言、そして「発展のあとはひたすら衰退する」という史観は、20世紀に入って覆された。七つの特集をたどった、歴史編の締めくくり。