比較言語学の教科書を開くと、必ずと言っていいほど目にする記号がある——単語の前に付いた、小さな星印(*)。たとえば「印欧祖語の *bʰréh₂tēr(兄弟)」というように。この記号を、体系立てて最初に使ったのが、シュライヒャーである。

わずか二行の脚注に記された、発明の瞬間

サンスクリット語の音韻論を扱う一節の脚注に、シュライヒャーはこう書き記している。

* bezeichnet erschloßene formen; bei den formen der indogermanischen Ursprache haben wir diese bezeichnung als überflüßig hinweg gelaßen.

(星印(*)は、推定によって導き出された形式を示す。ただし、印欧祖語の諸形式については、この符号を付すことは冗長であるとみなし、省いた。)

この一文に、二つの重要な情報が同時に含まれている。第一に、星印は「実際の文献に記録された形」ではなく「比較の手続きによって導き出された、推定上の形」を示すための記号として導入された。第二に、そして興味深いことに、シュライヒャー自身は、この本の中で印欧祖語そのものの形式には星印を付けていない、と明言している——なぜなら、印欧祖語の形はすべて推定形であることが自明すぎて、いちいち印を付ける必要がないと考えたからだ。

なぜこの記号が必要だったのか

シュライヒャー以前の比較文法(ボップやラスクの仕事を思い出してほしい)は、実在する複数の言語——サンスクリット語、ギリシア語、ラテン語、ゴート語など——の間の対応関係を示すことに主眼を置いていた。これらはすべて、実際に文献として残っている、「見える」言語である。

しかし、対応関係の先には、当然こう問いたくなる——では、これらすべての祖先にあたる、もはやどの文献にも残っていない「祖語」は、どんな形をしていたのか。シュライヒャーは、この問いに正面から答えようとした。比較によって「これが祖語の形だったはずだ」と再構築した形を、実際に文献に残っている形と、記号のうえで明確に区別する必要があった——これが、星印という記法が生まれた理由である。

記録された形 サンスクリット語 bhrātar ラテン語 frater 星印なし——文献に実在 再建された形 印欧祖語 *bhrātēr (シュライヒャーは略) 推定形——比較の産物 「見える」形と「推定」の形を分ける、たった一つの星印
星印が分ける、二つの種類の「形」。図:ToL

今も生き続ける記号

現代の言語学者が印欧祖語の単語を書くとき、必ず星印を添える——たとえば「*ph₂tḗr(父)」のように。この慣習は、シュライヒャーがこの脚注で示した発想の、直接の子孫である。彼自身は、印欧祖語の形にはあえて星印を省いたが、後続の世代の言語学者は、まさに「省かずに、常に付けるべきだ」という方向へ、この発明を洗練させていった。 記録された事実と、推定にもとづく仮説とを、記号レベルで明確に区別する——このごく単純な発想が、150年以上たった今も、専門分野の標準表記として生き続けている。

まとめ

論点内容
引用の要旨星印(*)は「推定によって導き出された形」を示す記号として導入された
シュライヒャー自身の運用印欧祖語の形式には、冗長として星印を省いていた
後世への影響現代の比較言語学は、印欧祖語のすべての再建形に星印を付ける——まさにシュライヒャーが省いた箇所に

一言でいえば——シュライヒャーが「省いてよい」と判断した記号を、後続の世代は「省いてはならない」ものへと磨き上げた。星印は今も、比較言語学者の指先に生き続けている。